Netflixで少しずつ観進めていたFujii Kaze ”LOVE ALL SERVE ALL STADIUM LIVE”。
熱狂のライブも後半に差し掛かった頃、真っ赤な衣装を身に纏って鈍い光沢を放つサックスを吹く姿、音を聴いて、藤井風さんってサックス奏者としてもとんでもなくカッコいいな、これは風になりたい人いっぱいいるだろうな、と当たり前の感想を持った翌日『怪物』を観た。
是枝裕和監督の作品という以外は予備知識無しで観たその映画は、小学校を舞台に、身の回りの現実や昨日見た哀しいニュースの写し絵のような、映画が現実の生々しさで物語が進行し、三度繰り返された時間軸の精巧な構成に徐々に引き込まれていった。
田中裕子さんが「言葉にならない時はこうやってブォーって吹けばいい」みたいな台詞とともに吹いたホルンのシーンがとてもよかった。結果的に「イエスマン」のジム・キャリーの演奏シーンと同じ作用を及ぼし、そして前日見たサックスとオーバーラップした。
途中からは段々「銀河鉄道の夜」のようだと思いつつ、アニメの「銀河鉄道の夜」の音楽は細野晴臣さんだったなと思ったりしながら観たその映画は坂本龍一さんの音楽とともに素晴らしいラストシーンで出発した。
もし、自分がこないだ作った映画が全国公開されたらどんな感じなんだろうと想像した。
そして明らかに素晴らしい脚本(坂元裕二さんが書いたものだとエンドロールで知る)があって出来た映画を観て
自分が凄い脚本で映画を作ったらどんな感じなんだろう?とほんの少し空想したりもした。
『君たちはどう生きるか』
数日後、普段こんなペースで映画を観ることはないが、SNSで情報が流れてくる度にスッと目を逸らすのもなんなんで公開翌日に観た。映画が地続きだったかのように「怪物」同様また冒頭火事のシーンから始まった。
少年が誰かにやられたかのような嘘をつくところも同じだった。
少年の作文に気づいて土砂降りの中走り出す瑛太さん扮するホリ先生、「君たちはどう生きるか」という本に気づいて涙し動き出す眞人少年。
外にあるトイレに向かう場面は谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」を思い出した。
「ヤンヤン 夏の想い出」を観た時はなんだか遺作みたいな映画だと思ったが、この映画はなんだか遺作になる気満々のそうなっても構わないように作られた映画に見えた。
うじうじした少年を描こうとしているのにアムロやシンジ君みたいには決してならない感じや、自由に作られているからか鈴木清順の「悪太郎」「東京流れ者」「ツィゴイネルワイゼン」「陽炎座」などなどを想起していた。
ニーチェ、永劫回帰、クレタ人の嘘、ヒトラー、アインシュタイン、クシャナ、母親はもう死んでいる、と同時に汎神論、わらわらと精子が螺旋状に昇る弱肉強食、食物連鎖、そして最近個人的に青鷺や白鷺、だけでなく色々鳥づいていたので鳥を見ているだけで面白かった。
上映中、少しのタイムラグがあったが父親のやたら渋い声がキムタクだと気づく。
観る前は後期ゴダールみたいな、その宮﨑駿監督版かなと思いながら観たが、やはり個人的にはそうだった。
(黒澤明監督と比較されている文章を読んだ気がするが後期の作品は「夢」くらいしか観ていないので)
初期の頃の躍動感はなく、全てが少しあっさりとしていたが、それも含めて愉しんだ。
ある種の制約の中で作られる映画の素晴らしさ、というのも勿論あるが、あるがまま自由に作られた映画を観ているとついつい笑ってしまって、そんな映画を観るのが好きだ。まるで子供の頃によく見た夢のようだった。
衝撃のはじまりのラスト、最高の映画でした。
ところでエンディングの音楽の音量、少しだけ小さい気がしたんだけど、気のせいかもしれない。
You’re my wonderwall
https://youtu.be/PdcVYR7kikg
Serge Gainsbourg & Jane Birkin – Je t’aime… moi non plus/Original videoclip (Fontana 1969)
https://youtu.be/GlpDf6XX_j0